蝶人戯画録

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泉鏡花生誕140年記念「清方が描いた鏡花の世界」展をみて

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茫洋物見遊山記第142回&鎌倉ちょっと不思議な物語第298回

 

今年は泉鏡花の記念年ということでいろんなところでいろんな催しがあるようですが、私が行くのはこの鏑木清方記念博物館のこの展示だけ。

 

清方は鏡花ととても仲が良くて彼の小説の挿絵を描きたくて仕方がなかったそうですが、明治35年になってようやく「三枚続」という作品の挿絵に加えて装丁まですることができて、大喜びしたんだそうです。

 

この展示会の目玉は、大正9年に製作された「妖魚」というタイトルの和製人魚図でしょう。これはいつもの江戸の春風のような純日本調の端正な日本画を得意とした清方の作風とは全然異なる西洋的な題材を、和洋折衷的な手法で描いた異色の作品です。

 

水上の岩に乗った上半身裸、下半身魚の妖艶な人魚が、あたかもドナウ川のセイレーンのように、鏡花の「高野聖」に出てくる呪力を持った悪女のように、黒髪を蛇のように垂らし、最近流行の真っ赤な口紅をつけて、近寄ってくる哀れな犠牲者を待ち受けているのです。

 

いっけん純情可憐でいて、内面女夜叉のようなファム・ファタールに会いたい人は、来月4日まで鎌倉小町通りの同館を訪ねてみてはいかがでせうか。

 

中也忌やおひたし食す白き骨 蝶人

 

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