石井輝男監督の「黄線地帯」を見て
闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.377
1960年制作の新東宝映画で、懐かしき三原葉子や天知茂、吉田輝夫等が出演している。
殺人犯の天知に誘拐されて神戸に逃げた三原を婚約者で新聞記者の吉田が追う。神戸にはアルジェのそれを模したカスバという売春地帯があって、この不法地帯に売春婦や悪者たちがひしめき合っているのである。
それはともかくこの映画ではまだ三原葉子が、「私はそんな汚らわしいことなんかこれっぽっちもしてなくってよ」といういまでは黒柳徹子くらいしか喋っていない古い東京の良家の子女の言葉を使っている。
こういう女らしい悠長な言葉遣いは小津映画で原節子などが当たり前に用いていたが、70年代には絶滅するのである。
絶望せよもっと絶望せよ我々にはまだ絶望が足りない 蝶人