蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

もてなし~「これでも詩かよ」第62番

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ある晴れた日に第200回

 

もてなしとは、たとえば交通事故を起こしたご主人のことで一瞬にして髪の毛と顔面が蒼白となり、夫の代わりに自分が死んで相手にお詫びしようとまで思いつめている女性の背中をさすりながら、「大丈夫、大丈夫」と力づけてあげること。

 

もてなしとは、たとえば車を停めるところがなくて困っている工事にやって来た業者を見かねて、「午後二時までなら自家で借りている駐車スペースを使ってもいいですよ」とさらりと言えること。

 

困っている人がしゃがみこんでいる場所まで降りて行って、その悩みに思いを致し、耳を傾け、できればその願いを叶えてあげること。

それがもてなし。

 

派手な化粧でびっくり眼張りした美女が、テレビカメラの前で艶然と頬笑んで、片仮名で

「オ・モ・テ・ナ・シ」

などと、タイ人さながら合掌してみせることではない。

 

 

 なにゆえに旗日に旗を出さぬかとそのうち町内会長が言ってくるだろ 蝶人