蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

ロブ・ライナー監督の「スタンド・バイ・ミー」をみて~「これでも詩かよ」第69番

 

 

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.627&ある晴れた日に第208回

 

 

鉄橋の上を驀進する機関車は、君を轢き殺そうとしている。

 

獰猛なドーベルマンは、君のふぐりを噛み切ろうとしている。

 

ちんけなちんぴらは、ジャックナイフを振りかざして君に迫ってくる。

 

世界は、無数の殺意で満ちている。

 

 

君の兄さんは、突如としてこの世を身罷った。

 

君は、君の父親の愛を感じることができない。

 

森の中の池のほとりで、少年はひとりぼっちで死んでいる。

 

世界は、無数の死で満ちている。

 

 

けれども、森の中には一頭のヘラ鹿が遊んでいる。

 

そして君の傍には、たった一人の友がいる。

 

すべての人々を敵に回しても、君の傍らに立ち続けるであろう一人の友人が。

 

世界は無数の殺意と死と一滴の愛で作られているのだ。

 

 

 

なにゆえに軍艦の色は灰色か人を殺すは憂鬱なるゆえ  蝶人