蝶人戯画録

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クロード・ソーテ監督の「愛を弾く女」をみて

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bowyow cine-archives vol.658

 

 

 才能ある若きヴァイオリニスト(エマニュエル・ベアール)が楽器修理の職人(ダニエル・オートゥイユ)を愛するようになるが、地味で実直に生きる男が、その熱烈な求愛を退け、深く傷つく悲しい話である。

 

 すでに彼女には恋人(アンドレ・デユソリエ)がおり、しかもその恋人は男と同じ修理工房の長年にわたるパートナーだったから、傷ついた者は2人だけではなかったのである。

 

 相寄る孤独な魂の間に何が起こったのだろう? 男は派手な演奏家と地味な裏方では生きる世界が違いすぎると考え、「あなたを愛してはいない」とまで言って女から遠ざかる。

 

 女の方からホテルで抱いてとまで言うておるのだから、抱いてあげればよかったのではないか、ほんとにダメかどうか一度試してみればよかったのではないか、と思うのだが、結局2人はそのまま別れてしまうラストの黒い瞳が悲しいが、男と女とは、人世とはそんなものではないでしょうかねとこの職人監督はいうのである。

 

 ジャック・カントロフが弾くラベルのバイオリンソナタが、いつまでも心に残る。

 もしかするとクロード・ソーテこそフランス映画の本流中の本流だったのかも知れない。

 ところで原題は「冬の魂」なのに、どうして邦題は「愛を弾く女」になってしまうのだろう。

 

 

   なにゆえに日本のサッカーは負けたのか弱い弱いひとえに弱いから 蝶人