橋本治著「結婚」を読んで
照る日曇る日第723回
異才橋本治選手が28歳になったOLのヒロインになり変って、結婚について、ああでもない、こうでもないと悩んで悩んで考え抜く哲学小説なり。
確かに結婚は人世の一大事件であるが、あれはヒロイン=著者のようにぐちゃぐちゃと考えたうえでするものではない。
結婚とは、ともかく相手を猛烈に好きになって、いつも共にいたい。そうでなければ自分は不幸で人世上の欠損がある、と考える一点から暴発する「霊肉一体のムーブメント」であるからして、卵子の数が少なくなるとか、衰えるとか、親や友人からあれこれ圧迫を受けるとか、将来の生活設計がどうなるとかいった高尚なる諸問題とはいっさい関係がない。
現代に生きる女性の生と結婚についていろいろな角度から考察し、こざかしく憂悶してきたこの小説は、ラストにいたって突如コペルニクス的転換を遂げていわゆるひとつの文芸上のカタストロフ、じゃなかった、ハッピーエンドに突入していくが、果たしてそれが著者の説くような正しい結婚への道であるかどうかは、誰にも確言できないはずである。
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