蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

ノーマン・ジュイソン監督の「屋根の上のバイオリン弾き」をみて

f:id:kawaiimuku:20140714112528j:plain

 

bowyow cine-archives vol.683

 

 

あの有名な「サンライズ、サンセット」の歌が鳴り響くこの長すぎる映画は、主人公の娘たちの嫁入り話と帝政ロシアユダヤ人迫害が2大テーマとなっている。

 

ノーマン・ジュイソンの演出はかったるいが、ジョン・ウイリアムズの編曲は見事。屋根の上から聴こえてくるバイオリンはアイザック・スターンで、この人は明朗な歌をうたわせるが、メニューインと同様、音程に難がある。

 

 されどこのユダヤ系のバイオリニストは、絶対音感と超絶技巧を誇示しながら、無機的な音楽ならざる音楽をまきちらす最近の若手より、はるかに豊かな音楽を届けてくれたのである。

 

 そういえば泉下の森繁久彌は、いまごろどうしているだろう? 去年の7月に死んだ酒井君もどうしているだろう? 

 

 生きている人より死んだ人のほうが慕わしく思われる今日この頃であるなあ。

 

 

 なにゆえに屋根に上ってヴァイオリンを弾く生きるってことは悲しいことだから 蝶人