蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

なにゆえに第23回~西暦2016年睦月蝶人花鳥風月狂歌三昧

ある晴れた日に 第359回 なにゆえに急にエアコンが停まってしまうしばらくは自分を暖めているらし なにゆえに子供はあんなに元気に走って騒ぐまだ誰も挫折を知らない なにゆえに老人はとぼとぼ歩いてる心ゆくまで悔ゆるため なにゆえに「最終的に不可逆的…

西暦2016年睦月蝶人花鳥風月狂歌三昧

ある晴れた日に 第358回 隣の庭にたわわに鳴れる柿ことごとく鳥たちの御馳走となる 耕君から「お父さん怒ったり注意したりしないでね」と云われてしまった大晦日 ひとつ家に四人が眠るお正月 正月の眠りを醒ます核実験たった一発で夜も眠れず 短歌雑誌で…

ドナルド・キーン著作集第13巻「明治天皇〔中〕」を読んで

照る日曇る日第840回 明治8年の「江華島事件と東奥巡幸」から明治28年の日清戦争の勝利までを、「明治天皇紀」をベースにしながら、内外の様々な文献を自在に引用しつつ、明治という時代の政治経済社会文明人間模様について極力冷静客観的な音吐による…

国立劇場で「通し狂言・小春穏沖津白波」千穐楽をみて

茫洋物見遊山記第196回 河竹黙阿弥生誕200年を記念して半蔵門の国立劇場で正月の3日からうたれていた公演も今日が最後の千穐楽です。 黙阿弥の「幻の名作」の2002年以来の再演でしたが、大詰第2場の「鎌倉佐助稲荷鳥居前」の小狐礼三の大立ち回…

ジョエル・シュマッカー「セント・エルモス・ファイヤー」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.977 大学を卒業した7人の男女が、社会人になっても愛したり憎んだり、落ちこぼれのロブ・ロウを助けてやったりして青春を懐かしみながら延長させようと躍起になる「あの頃君は若かった」映画なりい。 彼らは映画の中…

マイケル・マン監督の「ヒート」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.976 通常の犯罪映画では悪人の家庭の事情なんかろくすっぽ描かないけれど、これは違う。正義の味方アル・パチーノと同じウエイトで凶悪ギャング、ロバート・デ・ニーロの恋人とのからみを説明しているから、対決の構図…

フレッド・ジンネマン監督の「わが命つきるとも」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.975 1966年の英国映画でヘンリー8世(ロバート・ショウ)に斬首されたトーマス・モアが主人公ずら。 「わが命つきるとも」はいい邦題であるとは思うが「わが命尽きるとも」と漢字にしなければ意味が通じないだろ…

ジョン・アヴネット監督の「ボーダー」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.974 原題は「正義の殺人者」。NY市の警官コンビ、ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノの御大同士が「正義の殺人者」となって諸悪の根源を手ずから退治するという話。 いわば公権力を利用した私権力の乱用であるが…

夢は第2の人生である 第30回 

西暦2015年皐月蝶人酔生夢死幾百夜 私は親分に会って杯を返すと、その足で丘を登って、宿敵の組の親分をドスでぶすりと殺った。5/1 いつもと同じように、ユニクロのパンツ一枚で会社に行くと、先輩も同期も後輩も、社員の全員が見ないふりをして、私から…

林望の「謹訳平家物語二」を読んで

照る日曇る日第839回 それにしても「平家にあらずんば人にあらず」とまで称された清盛専制独裁政治が、なぜあれほどガタガタと崩壊してしまったのだろうか? 直接の要因としては、継母池禅尼の命乞いに応じて清盛が、頼朝を生かしてしまったことだろうが…

パスカル・プリッソン監督の「世界の果ての通学路」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.972 ケニア、モロッコ、アルゼンチン、インドなど世界の辺境地帯に暮らす子供たちが毎日何時間もかけてものすごい苦労をしながら通学するさまをレポートする、迫真のドクメンタリー映画ずら。 ケニアのサバンナをぞの…

アンソニー・マン監督の「テレマークの要塞」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.973 目前に迫ったナチスドイツの原爆装置を破壊しようとするカーク・ダグラスやノルウエイーのパリチザンたちのヒロイックな活躍を描く。 原爆装置を載せたフェリーには当然テレマークの市民も大勢乗っているのだが、…

スピルバーグ監督の「ジェラシック・パーク」3部作をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.969.970,971 ○スピルバーグ監督の「ジェラシック・パーク」をみて 琥珀の中に潜む恐竜の血を吸った蚊を素材にして元の恐竜を再現できるのだろうか? 密かにスタップ細胞を製造していた小保方さんなら出来るかもしれな…

村上春樹著「ラオスにいったい何があるというんですか?」を読んで

照る日曇る日第838回 ボストン、アイスランド、2か所のポートランド、ミコノス島、。NY、フィンランド、ルアンプラバン、トスカナ、熊本などを巡るムラカミ選手。 小説と違ってかなりリラックスして書かれた世界あちこち旅行の感想文集ずら。 フィンラ…

リドリー・スコット監督の「ブラック・レイン」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.968 主演のNYの刑事マイケル・ダグラスに高倉健と松田優作、若山富三郎などがからむ日米競演ヤクザ映画であるが、リドリー・スコットの手にかかるとお馴染みの大阪や横浜などのロケ先がどこかブレード・ランナー風の…

ゼイディー・スミス著「美について」を読んで

照る日曇る日第837回 正月早々、中身の濃い小説を堪能しました。ジャマイカ人の母とイギリスの人の父を持つ1975年生まれの美貌のハイブリッド作家が「ハワーズ・エンド」を顕彰してあらわした本格小説です。 ボストン近郊の大学町を舞台に、レンブラ…

忘年会~これでも詩かよ第166番

ある晴れた日に 第357回 詩人、詩人、詩人 詩人だって忘年会をひらく。 さとう三千魚さんの「浜風文庫」の忘年会だ。 詩人、詩人、詩人 夜の神田の「葡萄舎」で 詩人だけの忘年会さ。 ちょっと早く来すぎたので、駅から歩いて鎌倉橋へ。 1944年11月…

マーク・ローレンス監督の「ラブソングができるまで」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.967 80年代に一世風靡した地方ドサ回りのロートル・ミジュシャンが才能ある若い作詞家に助けられてラストチャンスをものにして一発逆転ヒットチャートにカムバックし新しい恋をゲットするというウエルメイド・コメデ…

メモリーズ盤のシャルル・ミュンシュ指揮ボストン響ライブを聴いて

音楽千夜一夜 第355回 駄演凡演も多いのですが、あたしゃあ昔から熱血漢ミンシュの乾坤一擲の炸裂棒が大好きで、特に相性が良かった故国のフランス国立管弦楽団とのベルリオーズやドビュッシーなどのフランス音楽を好んで聴いてきました。 この2枚組CD…

トニー・ギルロイ監督の「フィクサー」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.965 NYの弁護士事務所のもみ消し屋、ジョージ・クルーニーが良心の痛みに耐えかねて事務所や悪徳企業を裏切り最後に悪人ばらに一矢を報いる話だが、なんというてもジョージ・クルーニーが絵になるずら。 陰鬱な物語…

佐々木芽生監督の「ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.966 NYの御金持じゃない御爺さん(元郵便局員)と御婆さん(元図書館司書)が営々と築きあげた前衛アートコレクションを、彼らの半生の歩みと共に紹介するとても珍しい映画です。 狭いアパートの中はミニマルアート…

マーク・フォスター監督の「007慰めの報酬」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.964 恋人を殺されたジェームズ・ボンドが報復に走ろうとして英国紳士とはとても思えない乱暴な活劇を繰り返す異色の2008年度作品ずら。 主役のダニエル・クレイグはかつてのボンド役とは似ても似つかない風貌で、…

メリル・ストリープの3本をみる

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.960、961、963 ○ノーラ・エフロン監督の「ジュリー&ージュリア」をみて 米国人のための仏蘭西料理本を書いたジュリアと、そのレシピを一年で自習して顛末をブログに書いたジュリーの物語を交互に描く自伝的映画ずら。…

現代語訳「吾妻鏡 将軍追放」を読んで

照る日曇る日第836回 吉川弘文館から延々と刊行され続けてきた「吾妻鏡」の現代語訳であるが、これが最終巻かと思うといささかの感慨なしとしない。 結局は源家から権力を簒奪し、ライバルたちを皆殺しにしてその頂上にのし上がった北条一族の統治に都合…

吉川一義訳プルースト「失われた時を求めて9ソドムとゴモラⅡ」を読んで

照る日曇る日第835回 自分自身が同性愛者であったプルーストが描き出すシャルリュス男爵の外面マッチョで、その癖女々しい所作や性癖のあれやこれやは、まことにリアルなもので、喜劇に似て悲劇的な“おかま”の実存と本質を、それこそ自虐的に浮き彫りにし…

ジョン・スタージェス監督の「荒野の七人」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.959 黒澤の「七人の侍」のハリウッド版リメイクであるが、農民に雇われた助っ人対野盗の決闘という大枠は変わらないが、七人のキャラクターや脚本の随所で異同がある。 とりわけ本作では油断した七人が全員野盗の捕虜…

西暦2015年極月蝶人花鳥風月狂歌三昧

ある晴れた日に第356回 いくら野良犬でも解剖してはいけません綾部高校生物クラブ 亡き父と同じ年まで生きたのでもう明日からは楽しき余生 時代劇の名悪役として知られたる五味龍太郎静かに逝きたり 「ジェジェジェジェ」の賞味期限が尽きたので「びっく…

なにゆえに第22回~西暦2015年師走蝶人花鳥風月狂歌三昧

ある晴れた日に第355回 なにゆえになんーもせんうちに師走となるんやあかんあかんこのままではあかん なにゆえに貧乏人から税金を毟り取る安倍蚤糞が外国土産にばら撒くため なにゆえにまたしても奥歯が痛む岸本先生が削り残したから なにゆえにあかりち…

年の瀬のモーツァルト

音楽千夜一夜 第354回 誰がどんな楽器でどのように演奏しても楽しめるがモザールであるが、ここではフランツ・ブリュッヘンの指揮によるアムステルダム・モーツアルト・アンサンブルがヤープシュレーダーを迎えて演奏したヴァイオリン協奏曲やフランス・…

邦画をみるずら

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.957、958 ○市川昆監督の「黒い十人の女」をみて 和田夏十脚本が下らないので才人市川昆も腕の振るいようもなかったのだろう超がつく愚作である。せっかく水もしたたる全盛期の山本富士子や岸恵子が出ているというのに…