蝶人戯画録

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流鏑馬を見る


鎌倉ちょっと不思議な物語52回

今日は鎌倉まつりの最終日で八幡様流鏑馬神事がとり行われていたので、自転車に乗って見に行った。

流鏑馬は久しぶりだが、いつもながらの大迫力である。

武具に勇ましく身を固めた武者が、美しい優駿にまたがり、八幡様の数百メートルの間道を、東の端から西の端まで全力で疾走し、その間に三つの的を射る。

走りながら身をひねって矢をつがえ、的を狙い、ひょうと的を射るのである。

素人では到底できない神業であるが、今日は全的的中の名技が相次ぎ、つめかけた観衆からやんやの喝采を浴びていた。

流鏑馬は観光客めあての曲芸のように思われがちだが、実際は鎌倉時代の武士の遺風をいまに伝える豪壮な殺戮の荒業である。

往時百メートルの距離から弓を引いて百発百中、と伝えられる鎌倉武士の実力が、けっして嘘偽りのものではなかったことを、それこそ我々は目の当たりに実感するのである。

弓術の最後に到達すべき境地、それは弓も矢もなしに射当てることである。(オイゲン・ヘリゲル「日本の弓術」)

ひょうと射て はらりと散るか八重桜  芒羊