蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

前略 神奈川県知事 松沢成文殿


長洲知事時代の神奈川県は、飛鳥田市制の横浜市と並んで全国の障碍福祉対策のトップを走っていました。

ところが近年貴殿が知事になってからは、私たち障碍者関係者にとってろくなことはほとんどありません。

その原因は靖国神社が大好きだった前首相が成立させた、悪名高い「障害者自立法」にあります。

この法律は名前だけは立派ですが、障碍者に対しては過酷なまでの自己責任と社会復帰を、福祉施設に対しては過酷なまでの経営効率第1主義、成果主義を強引苛酷に押し付けようとするものです。

そのため、ほんらい労働という概念すら理解できず、実作業にもまったくなじまない知的!?障碍者である私の息子なども、いやおうなく効率労働に駆り立てられざるを得ず、慈愛に満ちた心優しき施設スタッフたちも、過酷なノルマと管理主義の哀れな奴隷となりつつあるのです。

いままでの社会福祉施設は、心身の最弱者を優しく保護しようというものでした。

しかしこれからは、純情可憐なナイチンゲールにアメリカ直伝の経営学を叩き込み、「生き残り&金儲けのための福祉工場」に大変身させよう。社会的弱者にも、福祉施設にも、一般世間と同様の競争原理の荒波にさらし、勝ち組と負け組みの格差をつけ、敗北者はこの世から退場していただこう、というのが小泉前首相以降の現政権担当者のシナリオなのです。

このような障碍者と障碍施設殺しの悪法の施行にあわせ、いま神奈川県は、施設に対する運営費補助を全廃する暴挙をくわだて、平成19年度予算では昨年比4分の1、金額にして3億6700万円のカットを実施しようとしています。

その結果、私の家族などが通っている福祉施設では、

1)重度の障碍者の受け入れがとても難しくなり、

2)同性介護など利用者の人権を守るための支援ができにくくなり、

3)さまざまな地域生活支援事業が展開できなくなり、

4)職員の雇用にさらに支障をきたし、労働環境がさらにさらに悪化しようとしています。

貴殿を支持する民主党などでは「格差社会はけしからん」と騒いでいますが、私に言わせれば、それは健常者のわがままで、生まれながらに“あらかじめ格差をつけられている”のは障碍者(児)たちです。

ハンディキャップのある人たちの生活を守るために、どうか民間社会福祉施設運営費補助金を存続してください。 

また、障碍者(児)たちの生活を支えるために、同補助金の水準を現状維持し、これ以上ビタ一文削減しないでください。

以上、緊急に要請します