蝶人戯画録

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モネ展を見る


降っても照っても 第8回

さて肝心の展覧会だが、私は印象派もモネも好きだが、このモネ展はあまり感心しなかった。

確かにあの睡蓮や英国の国会議事堂やビッグベンやウオータールー橋やルーアンの大聖堂などの名作は並んでいた。しかしなんだか世界各地から準主力作品の寄せ集めという希薄な印象はまぬかれない。

パリのオルセー美術館からやって来た「日傘の女性」(本展のポスターになっている)も、あそこにどっさり並べてある連作のうちの、比較的印象の薄い1点のみで、どうも隔靴掻痒の感がぬぐえない。

最近の東京はまたまたいやらしいバブルの時代に突入したとみえて、やたら美術館と演奏会場と展覧会とコンサートが増えてきた。

そうしてそのぶんどの展示も中身が薄くなってきているから、このモネ展もどうせそんなもんだろうと予想していたら、案の定そうだった。別に驚きもしなかったが、久しぶりの美術巡りなのでちと寂しくもあった。

さて世界から寄せ集めた全97点中、私のベスト2は、なぜかアサヒビール所蔵の「睡蓮」と「日本風太鼓橋」。

特に後者はお持ち帰りしたかった。でもサントリーならともかく、どうして営利第一のこんなビール会社がモネを持っているのだろう? 

もしかしてトップに隠れた目利きがいるのかな。謎だ。