蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

梟が鳴く森で 第1部うつろい 第26回


bowyow megalomania theater vol.1

10月10日 曇

 今日、星の子で山塚さんと塩川さんが、けんかしました。

山塚さんの髪の毛を、塩川さんがひっぱったら、山塚さんが泣きました。
えーん、えーん、えーんと山塚さんは泣きました。

「山塚、ちゃんとやれよ。どうしたの。けんかしないの」
と、僕は言いました。

そしたら、山塚さんは、机の上に置いてあった花びんを塩川さんめがけて投げつけました。

ちくしょう、ちくしょう、こんちくしょう、と言って投げつけました。

黄色やえんじや白の菊の花を、教室の床の上に投げました。水をいっぱい投げました。こっ、こっ、このお、と言って投げつけました。

塩川さんのみけんから、血が流れました。
たらりたらり真っ赤な血潮が流れました。たらーりたらーり、といつまでも流れました。
血は水の上を流れ、菊の白い花と混じって、とても綺麗でした。

泣かないで、泣かないで、塩川さん、と高木先生はおっしゃいました。

こら、こら、山塚。よせ、なんてことするんだ。と長島先生は怒鳴りました。

みんな逃げ出しました。教室から全員逃げ出しました。



♪他愛ないお笑い番組を見る妻が口を開けて笑っているのを見るのが好きだ 茫洋