蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

梟が鳴く森で 第2部たたかい 第25回


bowyow megalomania theater vol.1


11月3日

僕たちが星の子学園を脱走してから今日で3日になります。きっとはみんなが僕たちのことを心配して探し回っていることでしょう。きっと大捜索隊があちらこちらを探しているに違いありません。僕もお母さんや純くんのことが気になりますが、仲間と一緒なので里ごころがついたり悲しくなったりすることは全然ありません。
お母さん、大丈夫。僕はとても元気ですお。

けれどもみんなも家や家族のことが気になるので、今日は全員揃って朝早くから星の子学園の様子を偵察に行くことにしました。

細長いあぜ道を一列になってらせん状に山腹を何時間もぐるぐる回って合計3つの山を登って下りてお昼前にようやく星の子を見下ろす阿弥陀山のてっぺんにやって来ました。どうして阿弥陀山と呼ぶかというと、この山を星の子から見ると、大きな仏様がねんねぐーしている姿に見えるからです。

阿弥陀山の頂上から小さな盆地の下の方を見下ろしたのですが、なんだか様子が変です。僕たちが逃げてきた運動場と阿弥陀山の間には大勢の警察官のような人たちがウロウロ行き来しているのです。学園の中はしーんとして静まり返り、いつまでたっても仲間たちが外に出てくる気配はありません。

お昼休みが終わって阿弥陀山の日が陰る頃になっても誰も運動場に出てこないので、とうとう僕たちはあきらめてもと来た道を引き返しました。


次男去りし翌日仙人草の白く小さな花咲きにけり 茫洋