蝶人戯画録

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ソニー盤「ロベルト・シューマン全集」を聴いて


♪音楽千夜一夜 第162夜

この頃狂ったように廉価版の大安売りを全世界で展開しているソニーグループのシューマン全集25枚組。一枚当たり258円ということなので、やはり買わずにはいられませんでした。

交響曲はレヴァイン&フィラデルフィア菅という珍しい組み合わせであるが別にどうということなし。声楽の大曲でいま録音が相次いでいる「楽園とペリ」はアーノンクールバイエルン放響、「ファウストからの情景」はアバドベルリンフィルの名演ですこぶる聴きごたえあり。

ちなみにアバドは昨夜のFM放送でブラームスカンタータリナルド」という珍しい曲をやっていた。声とオケの合わせでは当代随一と思っていたが、その前日のマリク・ヤンソンスベルリンフィルによるヴェルディの「レクイエム」には震撼させられた。

カラヤンやムーテイやらバレンボイムで聴いてだいたいあんなもんと思っていたこの曲の恐るべき真価を突き付けられました。脱帽。今世界中の指揮者で聴くに値する随一の存在ではなかろうか。随二はもちろんハイティンク。期待していたダニエレ・ガティのウィーンフィルとのヴェトーヴェンもクラーバーの下手くそな真似っ子でがっかりだったし。

結局この全集でも歌曲がいちばん楽しめました。フィッシャーデイスカウ、ホロビッツの「詩人の恋」、ヴァルトラウト・マイヤーの『女の愛と生涯』、プレガルディエンの『リーダークライス』Op.24、クヴァストホフの『リーダークライス』Op.39、シュトゥッツマンの『愛の春』など名曲の名唱が存分に享楽でけまっせ。



この臭い汗は絶対に私の所産ではないぞ 茫洋