蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

山本薩夫監督「続忍びの者」を見て


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.65

かろうじて生き残った五右衛門だったが、もう忍者稼業は卒業だ。親子3人水入らずで楽しく暮らそうと思っていたところへ、乱入してきた信長の家来に愛児を殺されてしまう。

怒り狂った五右衛門は、最後に残った一向一揆の拠点であり、妻の故郷でもある紀州雑賀一族に身を寄せ、再び信長暗殺の野望に燃える。そうして家康の隠密服部半蔵と連携しつつ、反信長の先鋒明智光秀をそそのかせて本能寺の変の現場にまぎれこんで宿敵信長を切り殺す。手足を1本1本ちょんぎる残酷さは本編の白眉。さんざん悪事を働き、仏敵を惨殺してきた天下の大悪人を天下の大泥棒が打ち果たすのだから痛快無比とはこのことであろう。

しかし万万歳もそこまで。間もなく信長の後を襲った秀吉(東野英治郎が好演)の軍勢が雑賀一族の砦に押し寄せる。友軍の根来衆を引き連れて砦に戻ってきた五右衛門が見たものは全滅した仲間たちと妻の変わり果てた姿だった。
意を決した五右衛門は秀吉が磐居する聚楽第に忍び込むが善戦虚しく捕えられ、三条河原で釜ゆでの刑に処せられるのだった。ジャンジャン。

正編のでたらめさと違って、この続編はいちおう史実の流れに立脚したうえでのドラマになっているのでさいごまで居眠りしないで鑑賞することができました。


わらわらと松の廊下を駆けにけり 茫洋