蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

メトのベルディ「アイーダ」を視聴する


♪音楽千夜一夜  第175夜


新春の気分にあうか合わないか分からないが、ともかく見たのはこのNHKの録画。2009年10月24日のメトロポリタン歌劇場のライヴで幕間にルネ・フレミングが出演者にインタビューするというおまけ付きです。

表題役をヴィオレータ・ウルマーナ、ラダメスをヨハン・ボータ、アムレリスをドローラ・ザジックが熱演する3時間を楽しみましたが、中ではやはりベテランのザジックが遠くまで声を飛ばして圧巻ですが、この主役3人の最大の欠点は顔も体もブタブタブタなことでしょう。演技もいまだしであります。

指揮は、小生がかねがね注目しているダニエレ・ガッティですが、ウイーン・フィルで管弦楽を振っているときには威勢が良かったけれど、メトではどうも冴えない。音楽監督のレバインから、もっと自在な感興の高まりを引き出すすべを学んで欲しいものです。

演出は有名なゼッフィレッリを薄味にした感じのソニア・フリゼルですが、凱旋の場面で馬は4頭登場しても象が出てこないところにいちまつのわびしさを感じます。ともあれニューヨークの観衆は温かい。ウイーンやミラノと違って、あんまり細かいところを問題にせず、おおような態度で盛大なブラボーを浴びせるのは、これはこれで結構です。


野晒しや百尺竿頭一歩を進む 茫洋