蝶人戯画録

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東博で「円空」展を観て

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茫洋物見遊山記110

 

飛騨高山の千光寺のコレクションを中心に46点の円空の木彫を見せるが、ズズズズイっと眺めて行くと、だんだん退屈してくるのはなぜだろう。木彫りの大小は異なるが、手法が同一であり、特に顔の表情が類型的であるために、そういう気持ちになってしまうのである。

 

円空は、短時間でこれらの作品を掘り上げては周囲の人々に呉れてやっていたようだ。もとより旧来の常識を打ち破った破格の仏像であり、画期的な造形美を創造してはいるものの、それほど後世の我々が芸術的価値をうんぬんしたり格別に有り難がるような代物ではない。

 

一部の例外はあるが、おそらくこれらの作品の大半が信徒への贈り物であり、布教の道具だったのである。

 

なお作品番号34の「聖観音菩薩像」が「怒った表情である」と会場のプレートに解説されているが、怒ってなんかいませんぜ。ほれほれ、楽しげにほお笑んでいるではないか。東博の学芸員も少しは真面目に仕事をしてほしいものだ。

 

 

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