蝶人戯画録

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アレクサンドル・ソクーロフ監督の「牡牛座 レーニンの肖像」を見て

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.411

 

2001年のカンヌグランプリに輝いた秀作でロシア革命の指導者レーニンの最晩年を描いている。

 

全体に画面が緑色の紗がかかって曖昧模糊としているが、これはいかなる意図に基づくのかしらん。

 

最早死に瀕している療養所のレーニンは自由を奪われて事実上中央委員会の厳格な監視下に置かれており、すでに全権を掌握しているスターリンが見舞いと称して訪問しても、もはや自分の無力を悟るしかない。

 

どうしてこんな鉄面皮な奴を後継者に選んでしまったのかとはがみしながら息絶えていく革命家が哀れだが、それは自業自得というものだろう。

 

実際にソ連の英雄が晩年を過ごした土地や家屋を使用してロケしたそうだが、それにしてもどうしてこの映画がグランプリに輝いたのかさっぱり分からない。

 

 

地に紅き星々散らす花なればドウダンツツジを満天星と記すらむ 蝶人