リチャード・フライシャー監督の「ミクロの決死圏」を見て
闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.413
リチャード・フライシャーはジュール・ヴェルヌ原作の名作「海底二万哩」を演出した名監督で、私は映画の面白さをこの作品から、映画の哀しさを「しいのみ学園」(♪ぼくらはしいのみまあるいしいのみ」という歌!)によって知らされた。
「ミクロの決死圏」は「海底二万哩」ほど感動的な映画ではないが、それでも脳に損傷した重要人物を救済するために医療クルーを極小化して患者の体内に送り込み、手術してから生還するというアイデアは抜群で、フライシャーはそれを原題どおり「Fantastic Voyage」として当時のアニメ技術を駆使して幻想的に描いている。
この映画に不満があるとすれば、脳にダメージを受けたVIPが敵国の秘密情報を握っているという設定になっていることで、そんな下らない案件のためにこういう素敵なファンタジーが発条されていることが心外である。この映画に紅一点として出場しているラクエル・ウエルチ選手のピンチを救済するためのプロジェクトなら納得だが。
それにしても人間や物体を限りなく縮小する技術の開発は今でもどこかで誰かが行っているのだろうか?
白梅は隣家を向きて咲きにけり 蝶人