「グレン・グールド・コレクション第15集」5枚組を聴いて
♪音楽千夜一夜第299回
グールドさん、そんなに急いでどこへ行く? と聞いてもこの天才児は絶対に耳を傾けないであろう。それにもうとっくの昔に死んじまってるし。
彼は管弦楽でチェリビダッケがやったと同じようなことを、ピアノでやった。異常に早いテンポも、異常に遅すぎるテンポも、音楽的には正反対であっても音楽創造的にはまったく同じことで、通常のテンポでは体験できない異常な世界を切り開きたいからなのである。
ここに収められたモザールのソナタの大半が、そうしたミクロの決死圏を快速でとばしたり、超鈍足で昼寝したりしてみせるが、それでもモザールの音楽は充分に美しい。
それにつけても、たった1曲だけ普通のテンポで演奏されたk491のハ短調の協奏曲の素晴らしさよ。それはとりもなおさず、彼がバッハで大成功したそのやり口が、モザールでも成功するとは限らないということを証明しているようなものだった。
これやこのロック縄文時代のシャウトなりジェームズ・ブラウン『Out Of Sight』 蝶人