蝶人戯画録

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「岡井隆歌集第四巻」を読みて詠める 前篇

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照る日曇る日第576回&ある晴れた日に第123回

 

 

――北冥に鯤ありてその名をタカシ・オカイとなす。その大いに遥遊すること幾千里なるを知らず。

 

歴歴と地層を貫き刻まれしわれらが痛苦なるZeitgeist1994―2003

 

腰をかがめよろよろとそこを行くのは満身創痍のオイディプス王にあらずや?

 

「混沌」あるいは「偉大なる暗闇」とでも称すべし 闇の底に微かな光あり

 

知らざりきわがミク友の加藤、大辻両先生岡井門下の逸材なるとは

 

知らざりき元社青同解放派のゲバルト隊長小嵐九八郎岡井門下とは

 

名古屋、京都、大阪、東京、維納、激烈な羈旅のまにまに生まれし歌どち

 

前衛も古典も仏足石歌体も横書きも英数俗語入りもいち早くみなやり尽くされたり

 

ある時はヤハウエの如く激情に駆られ またある時はブッダの如く微笑えむ われらを激しくインスパイアーする君よ

 

短歌俳句詩評論音楽美術性愛テーバイのアルス・ノヴァ七つの大門ここに集う

 

<秋風や煉瓦につよく惹かれゆく>俳句のオルドルよりも短歌のアナルコサンジカを選び給えり

 

生くるため男は不条理を耐え忍ばねばならん歌人悩ます深夜の沈黙電話

 

若すぎる愛人に挑む老詩人たとえ壮年の騎乗に及ばずとも

 

ぬばたまの夜のいくさは熾烈ならん城を枕に討ち死にするのみ

 

ぬばたまの闇の奥より流れいで曙の春に溶け入る歌のはかなさ

 

バッハ聴きベルク、ペルトを好むきみ などてモザールを愛し給わぬ

 

われもまた美しき女流ヴァイオリニストの右腕の脇の窪みの暗がりを見ている

 

いくたびも青森核燃訪ねたる歌人にして きみWHYなおも原発に拠るる?

 

白鳥は冥府の王プルートに虐殺された それでもあなたは原発依存派なるか

 

飯島の耕一うしならずとも眉ひそめむ きみなぜ宮廷歌人になり給ひしか

 

差し出される手はためらわず握るとうso whatそれでは詩人は乞食坊主にあらずや

 

 

 

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