神奈川県立近代美術館鎌倉の「実験工房」を見て
茫洋物見遊山記第112回&鎌倉ちょっと不思議な物語第276回
久しぶりにここを訪れるとほっとする。どんな展覧会であろうが、周囲の環境と見事に調和した坂倉準三設計の美しい建物なので、こころはつねによろこびにみたされるのである。
しかし噂によるとこの美術館の地主である鶴岡八幡宮が神奈川県に立ち退きを迫った結果、当美術館は数年後に撤退し、少し離れた場所にある分館(超狭い!)と葉山館(超遠くて不便であまりデザインが良くない!)に集約されるという。
そりゃあ地主だから出て行けという権利はあるのだろうが、いったいこのわが国有数の芸術品のような美術館を鶴岡八幡宮はどうしようというのだろう。まさかぶっこわして結婚式場にするというんじゃあるまいな。
神様に歯向かうのも業腹だが、ともかく地主は天下の名建築を永久保存する義務と責任があると思うし、それは現状の美術館というかたちがもっともふさわしい。八幡宮と神奈川県はよく話し合って最善の解決を見出すべきである。
ということで展覧会の感想どころではなくなったが、現代芸術の扉を開くエポックとなった大辻清司、北代省三、駒井哲郎。福島秀子、山口勝弘、武満徹、湯浅譲二、園田高弘、秋山邦晴などの前衛的な芸術活動の一端を偲べる興味深い作品が目白押しだった。
*なお残念ながら本展は本日24日までです。
さようならさくらもひともたてものもみんなみんなきえさってゆく 蝶人