蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

「岡井隆歌集第四巻」を読みて詠める 後篇

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照る日曇る日第577回&ある晴れた日に第124

 

 

その歌は時代精神と世界苦に引き裂かれたるが その顔は仏のように笑っている

 

反米愛国植民地国家てふ旧態依然たる日共民青的政治観? 国旗をフレー、フレー逆さに振ればなんか新しき愛国愛郷の新人類転がり出るか? さにあらず世は既に闇の底

 

帝国はひそかにリンコルンの国雛離り矮小なリリパット国を樹立しておりまするぞ 殿

 

国家神道がものいう前のかむながらひとすじのなおの道いまなお辿るか竹取りの翁

 

竹取りの翁がいつくしみ育てしは玉のようなるかぐやの歌姫

 

嗚呼、黒鉄の国家などはそもそも無かったのだ 鞭声粛々夜河を渡る似非国歌

 

かつてわれら永世中立の夢を見たのではなかったか? むしろかのスイッツランドのごとく針鼠のやうに武装し、おのが集愚的Raison d'êtreを見い出せ

 

さらば米帝!さらば中ロ!われらいずれの国の陰謀にも加担せず独立不羈の道を歩むべし

 

侵略の共同性と集団性の罠を限りなく遠ざけ、自らが衛り、自らの安全を保障せよ<永世中立国ジャパン>

 

秋津洲大和の国を眺むればものみななべて黄昏ゆくめり大和しうるわし

 

シューマンの「歌の年」のごと歌いに歌う いつか自己励起の回路を逸脱するまで

 

なるほど歌はわれらの臓器なり/さてこの人の腹は黒いか白いか/いずれにしても臓器的祖存在

 

Oh Yeahノートリアスにいこう!デンジャラスでセンセーショナルにいこうぜ!と八十五翁shout

 

実験工房はけふも大きく開かれておる Il y a beaucoup de machines à coudre et parapluies sur cette position de la dissection

 

ともあらばあれ朱筆を入れながら本を読むようにして人世を相渉る人でないことだけは確かだ

 

<歌え歌え、歌いつづけよ!>と唆さるるや いくたびか日経歌壇で私の歌を選び呉れしその人

 

 

クライバーン、マリ=クレール・アラン、サヴァリッシュ、今宵賑わうクラシック冥界 蝶人