蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

西暦2013年弥生 蝶人花鳥風月狂歌三昧

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ある晴れた日に第125回

 

 

 

これやこのロック縄文時代のシャウトなりジェームズ・ブラウンOut Of Sight

 

狂気のきわみにあらず冷徹の叡智が光る出口なお「お筆先」

 

貧者の一灯のごと天上の音楽ごと美しき夢に満ちたり王仁三郎の碗

 

ママ友が「ドメバ」にさんざん殴られて逃亡するが「ハピネス」にだんだん近づく話なりけり

 

果樹園を車で走るのはよせと勧告すれど管理人はしたたかに居直る

 

藪椿万朶の赤が墜つる日に一枝の桜咲きにけり

 

ホト突かれアクメに達せしヒロインの絶叫哀し白昼の映画館

 

電通に都市文化デザイン部があるといういったい誰が何するところ?

 

磯風は雪風の砲雷撃にて撃沈されたり四四年四月七日坊ノ岬

 

一国に一つの核をあげませうそれとも全部捨てますか?

 

なにゆうてけつかんねんAbbé蚤糞おんどりゃどたまかち割ってくりょうか

 

御所人形、張子に芥子に加茂人形、お江戸の春は人形尽し

 

さらば市川團十郎そこにはいつも江戸の春風が吹いていた

 

ソロモン沖津波注意報でズタズタにされたモーツアルトを聴いているところ

 

クライバーン、マリ=クレール・アラン、サヴァリッシュ、今宵賑わうクラシック冥界

 

スタインウエイの鍵盤の上でもつれる男女ジョン・ケージの音楽のように

 

小鳥らの卵も木の皮もむさぼり食うめあな憎たらしタイワンリス

 

わが街で作っておりし口紅をこれからはベトナムで作ると資生堂がいう

 

なにゆえにユネスコ遺産登録に拝跪する鎌倉に鎌倉時代の遺物なし

 

大量の空気を運ぶバス多しこれもこの国の豊かさなるかや

 

ツイッツターで発句をバンバン叩き出すそんな貴方は平成の西鶴

 

地に紅き星々散らす花なればドウダンツツジを満天星と読むらめ

 

わが庵に美人姉妹並び立つ紅白の梅とつおいつ眺めて

 

恥ずかしそうに咲いていました「スーパースタア」という名の赤きバラ

 

九十越えしそば屋夫婦張り紙したり「五十六年間有難う」

 

六十年の歴史を閉じた浅羽家よこんなことならもう一度鰻を食うておけばよかった

 

さようならさくらもひともたてものもみんなみんなきえさってゆく

 

弥生三月ほうやれほ仕事よ早く飛んでこい

 

とろとろと柚子を煮てゆく昼下がり

 

柚子煮ればやがてジャムとなるめでたさよ

 

悪き奴眠れる間は悪事せず

 

3.11に歌を歌えぬ歌人かな

 

日銀の総裁に上り詰めたる味気無さ

 

節分や追われた鬼はどこへ行く

 

いざいかむルリビタキ遊ぶ朝夷奈峠

 

生れたての春風運ぶや無人バス

 

春一番御所人形のごとき童かな

 

わが妻が己に飾る内裏雛

 

 

――北冥に鯤ありてその名をタカシ・オカイとなす。その大いに遥遊すること幾千里なるを知らず。

 

歴歴と地層を貫き刻まれしわれらが痛苦なるZeitgeist1994―2003

 

腰をかがめよろよろとそこを行くのは満身創痍のオイディプス王にあらずや?

 

「混沌」あるいは「偉大なる暗闇」とでも称すべし 闇の底に微かな光あり

 

知らざりきわがミク友の加藤、大辻両先生岡井門下の逸材なるとは

 

知らざりき元社青同解放派のゲバルト隊長小嵐九八郎岡井門下とは

 

名古屋、京都、大阪、東京、維納、激烈な羈旅のまにまに生まれし歌どち

 

前衛も古典も仏足石歌体も横書きも英数俗語入りもいち早くみなやり尽くされたり

 

ある時はヤハウエの如く激情に駆られ またある時はブッダの如く微笑えむ われらを激しくインスパイアーする君よ

 

短歌俳句詩評論音楽美術性愛テーバイのアルス・ノヴァ七つの大門ここに集う

 

<秋風や煉瓦につよく惹かれゆく>俳句のオルドルよりも短歌のアナルコサンジカを選び給えり

 

生くるため男は不条理を耐え忍ばねばならん歌人悩ます深夜の沈黙電話

 

若すぎる愛人に挑む老詩人たとえ壮年の騎乗に及ばずとも

 

ぬばたまの夜のいくさは熾烈ならん城を枕に討ち死にするのみ

 

ぬばたまの闇の奥より流れいで曙の春に溶け入る歌のはかなさ

 

バッハ聴きベルク、ペルトを好むきみ などてモザールを愛し給わぬ

 

われもまた美しき女流ヴァイオリニストの右腕の脇の窪みの暗がりを見ている

 

いくたびも青森核燃訪ねたる歌人にして きみWHYなおも原発に拠るる?

 

白鳥は冥府の王プルートに虐殺された それでもあなたは原発依存派なるか

 

飯島の耕一うしならずとも眉ひそめむ きみなぜ宮廷歌人になり給ひしか

 

差し出される手はためらわず握るとうso whatそれでは詩人は乞食坊主にあらずや

 

その歌は時代精神と世界苦に引き裂かれたるが その顔は仏のように笑っている

 

反米愛国植民地国家てふ旧態依然たる日共民青的政治観? 国旗をフレー、フレー逆さに振ればなんか新しき愛国愛郷の新人類転がり出るか? さにあらず世は既に闇の底

 

帝国はひそかにリンコルンの国雛離り矮小なリリパット国を樹立しておりまするぞ 殿

 

国家神道がものいう前のかむながらひとすじのなおの道いまなお辿るか竹取りの翁

 

竹取りの翁がいつくしみ育てしは玉のようなるかぐやの歌姫

 

嗚呼、黒鉄の国家などはそもそも無かったのだ 鞭声粛々夜河を渡る似非国歌

 

かつてわれら永世中立の夢を見たのではなかったか? むしろかのスイッツランドのごとく針鼠のやうに武装し、おのが集愚的Raison d'êtreを見い出せ

 

さらば米帝!さらば中ロ!われらいずれの国の陰謀にも加担せず独立不羈の道を歩むべし

 

侵略の共同性と集団性の罠を限りなく遠ざけ、自らが衛り、自らの安全を保障せよ<永世中立国ジャパン>

 

秋津洲大和の国を眺むればものみななべて黄昏ゆくめり大和しうるわし

 

シューマンの「歌の年」のごと歌いに歌う いつか自己励起の回路を逸脱するまで

 

なるほど歌はわれらの臓器なり/さてこの人の腹は黒いか白いか/いずれにしても臓器的祖存在

 

Oh Yeahノートリアスにいこう!デンジャラスでセンセーショナルにいこうぜ!と八十五翁shout

 

実験工房はけふも大きく開かれておる Il y a beaucoup de machines à coudre et parapluies sur cette position de la dissection

 

ともあらばあれ朱筆を入れながら本を読むようにして人世を相渉る人でないことだけは確かだ

 

<歌え歌え、歌いつづけよ!>と唆さるるや いくたびか日経歌壇で私の歌を選び呉れしその人

 

 

全身を鋭き針で武装せし花なき薔薇に春風よ吹け 蝶人