蝶人戯画録

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ジョン・ヒューストン監督の「マルタの鷹」を観て

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.443

 

ご存知の原作を名匠ヒューストンがメガフォンを撮ってボギーがサンフランの街を駆けまわれば面白くないわけがない。特に全篇に漂うすがれたB級フィルム・ノワールの味がたまらない。

 

 今回特に感じたのはそういうテーストを醸し出すうえでもっとも貢献しているのはボギーのあのしゃがれ声である。いかにも即物的であの奥深いどこか甘さのある声音がこの映画の主調和音となって、いわばでたとこ勝負のチャランポランな物語の展開をもっともらしく見せている。

 

ただし惜しむらくはヒロインのメアリー・アスターがミスキャストで、こいつがボギーのファム・ファタールなんて誰も思わないだろう。

 

 

どう見てもただの白なのに「ライムホワイトパールクリスタルシャインです」と言い張る車のセールスマン 蝶人