蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

ハワード・ホークス監督の「エル・ドラド」を観て

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闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.445

 

ジョン・フォードの「馬上の2人」におけるジェームズ・スチュアートとロチャード・ウイッドマークの関係がここではホークスによってジョン・ウエインとロバート・ミッチャムの僚友関係として再現されている。

 

ホークスのメガフォンのもと、撮影は引退していた名キャメラマン、ハロルド・ロッソン、音楽はネルソン・リドル、そして衣装はイデス・ヘッドという名コンビによって暗闇に流れ出ては流れ去る映像のなんとみずみずしい生命に満ちあふれていることよ。

 

とりわけヘプバーン映画の衣装担当として高名なイデス・ヘッドが土臭い西部劇の世界にあってとても良い仕事をしているのが印象に残る。お洒落な赤シャツのウエイン!

 

さらに特筆すべきはウエインとミッチャムをはじめとする登場人物のくっきりとした造形の確かさで、それは酒場の女主人モーディー(シャーリン・ホルト)牧場主ジェイスン(エドワード・アズナー)とその娘(ミシェル・ケーリー)、ナイフ使いの名人ミシシッピー(ジェームズ・カーン)、悪役のマクロード(クリストファー・ジョージ)というガンマンに至るまであざやかに見事に描き尽くされている。

 

これぞ西部劇、これぞ映画。夜のしじまにいつまでも終わってほしくない至福の時が流れて行く。

 

      蝶と見えまた花と見ゆ櫻かな 蝶人