蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

東京竹橋の国立近代美術館で「フランシス・ベーコン展」を観て

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茫洋物見遊山記第120

 

サザエ

観る前の印象としてはまんずこの人の名前が超カッコイイわね。でも現代絵画だそうだけど、訳がわからない絵だと困るなあ。

 

マスオ

まあなんと奇麗な色使いなんだろう。特にあのピンクとグリーン。ブライトカラーとパステルカラー、補色と黒との対比が異常なまでに劇的な効果をあげているから、顔と体がぐにゃぐにゃな異様な人物らしきものが描かれていてもどうでもいいような気になってくるんだね。

 

サザエ

ローマ法王とか死んだ同性の愛人とかモデルが特定できている絵もあるようだけど、そんなことは全然関係ない。あのぐにゃぐにゃのデクノボウになった怪物こそが私たちなんだわ。カツオもワカメもよーく見ておくのよ。

 

カツオ

はーい。ベーコンは私たちの内臓をベーコンにして描いたんだね。

 

ワカメ

ベーコンは、ムンクの絵をもっときれいに丁寧に描いたようなもんだね。

 

波平

ロンドンの彼のアトリエの写真が飾ってあったけど、その汚かったこと。あのゴミ箱の中からあんなに奇麗な画が誕生したなんて信じられない。あの地上の墓場的な醜悪さとあの抽象的で天国的な美しさと清潔さはワンセットになって画家の魂の中でぐちゃぐちゃになって共存していたに違いないね。

 

サザエ

それにしてあの蛸の八ちゃんを左右と正面から捉えた「三幅対」を自宅に飾っていたら、きっと一週間で全員発狂してしまうでしょうね。

 

マスオ

大丈夫さ、うちでは絶対に飾れないから。

 

 

◎なお本展は、来る5月26日まで東京国立近代美術館にてじぇいじぇいと開催中。

 

 

おのが内臓をさながらベーコンのように描きたりフランシス・ベーコン 蝶人