蝶人戯画録

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オットー・クレンペラーの「マーラー交響曲集」を聴いて

 

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音楽千夜一夜第308回

 

クレンペラーでいちばん好ましいのはモーツアルトの交響曲とオペラの演奏で、これこそは人類の不滅の宝物だろう。しかし彼はセルやベームと同様、ライヴでその真価を発揮する指揮者だった。

 

ここでは手兵であるフィルハーモニア管を相手にマーラーの交響曲の2番、4番、7番、9番と「大地の歌」を振っており、2番と7番の終楽章などではなかなかの盛り上がりを見せる。最後の曲はワルターと違って妙にモダンな味わいがあって面白く聴けるが、だからといって交響曲におけるバーンスタインのような「なにか」が起こるわけでもない。

 

クレンペラーにその「なにか」が起こるのは、フィルハーニアとの大人しいスタジオ録音ではなく、例えばバイエルン放響やケルン放響、あるいはウイーン・フィルとのとのライブでブラームスベートーヴェンを振ったときである。

 

とりわけバイエルン放響の音源は録音も素晴らしく、ぜひもういちど英EMIからリリースしてほしいものだ。

 

 

 

ほんたうはアフリカの児が食べるべき二つ目のパンを我は喰ふなり 蝶人