鏑木清方生誕135年記念「初夏の風情」展を見て
茫洋物見遊山記第127回&鎌倉ちょっと不思議な物語第288回
富士山の世界遺産登録の馬鹿騒ぎをみせつけられるにつけ、鎌倉が同じようなめにあわなくて本当に良かったと思わずにはいられない。国内のみならず世界中から押し寄せる観光客を喜ぶのは、東京資本の土産物業者だけなのだから。美観の浪費と環境の劣化、住民の静謐生活権の対価はなにか? 恐らくは無。
観光客が増えれば市の収入も増え、それが少しは我々市民に還元されてもいいはずなのに、この町の税金は相変わらず異様なまでに高く、かててくわえて市職員の給料も本邦1、2を争っており、その激減をうたい文句に当選した若い市長が公約を果たした形跡も無い。やれやれ。
そういう次第で早朝の小町通りを歩いていると、お馴染みの鏑木清方消記念美術館でわが年来の愛読書「こしかたの記」にちなんだ初夏の風情展をやっていた。木原美術館やサントリー美術館からの出品も加わって、夏の朝夕や草花にまつわる江戸風美人画の数々が例によって厳選少数飾られている。
画家のお得意は中間色のあざやかな色遣いで、今回も初夏の着物をいろどる緑青、青磁、とくさ、苔色などの地の色との対比の妙に感嘆の声をあげながら開場を去ったことでした。
なお本展は明後30日まで開催されています。
つばくらめ五軒に一軒の空き家かな 蝶人