蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

辺見庸著「青い花」を読んで

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照る日曇る日 第605回

 

地口と詩を自在に操りながら震災と戦争の時代を彷徨する寄る辺なき魂の孤独と悲しみを、あるときは悲劇的に、またある時は喜劇的に歌いあげる変幻自在なレトリックをてって的に駆使した超詩小説である。エイトコラサーノヤットコセ。

 

この主人公が生きているのは現代にほど近い近未来で、またしても自立して全世界と向き合うことに失敗したニッポンチャチャチャは、どうやら中国と同盟を結んで米帝と戦争状態に入っているようだ。ガチョーン。

 

しかし頼みの中国は内乱分裂状態に陥っているようで、いずれにしても勝てるあてのない戦争に突入したこの国と民草を覆っているのは、限りない絶望と虚無である。アラエッサッサア、アンタ、マタヤッチャッタノネエ。いやさか、いやさか。

 

3.11規模の大震災にふたたび遭遇して故郷を追われた、著者を思わせる主人公には、もはや生きる根っこもなく、なんの夢も希望も欲望もなく、中国製のヒロポンを口にすることだけを願いながら夜の食国をさすらうのだが、その脳内にはかつての大日本帝国戦争の悪夢やうしなわれた妻子の幻影が走馬灯のようによぎるのであった。アジャパア。

 

おいらはドラマー やくざなドラマー おいらが怒れば虎馬呼ぶぜ 蝶人