蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

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「これでも詩かよ」第9弾ある晴れた日に第138回  

 

君が怒れば、私は悲しい。

君が歌えば、私はほほえむ。

君が泣けば、私も泣こう。

君が笑えば、私も笑うだろう。

 

君が描けば、妻は眺める。

君が食べ過ぎれば、妻は心配。

君が頭をボカボカ叩けば、妻も頭を抱えて絶望。

君が「お母さん、シリトリしよ」と言えば、妻はうれしい。

 

君が耳に指を突っ込んで通りを激走すれば、私はうろたえる。

君が両手をバシバシ叩き、ウウウウ唸るなら、私は棒立ちになる。

君が「お父さん、蛇ですよ」と教えてくれれば私は驚き、それがムカデだったらひと安心。

君が「黒木メイサのDⅤD見ますよ」と言えば、私も一緒に見るだろう。

 

君が簡単ケイタイを使えたので、妻はビックリ。

君が電話ばかりすれば、妻は心臓がパクパク。

君から電話が無くても、妻はハラハラ、ドキドキ。

君が日に40本も電話する日が続けば、妻は死んでしまうだろう。

 

君が喋れば、私は聞こう。

君が「ミニストップへ行ってきます」とえば、私は「行ってらっしゃい」と応じる。

君が激しくドアを閉めれば、私は眉を顰める。

君が私を嫌っても、私はじっと我慢するだろう。

 

君が列車遅延に巻き込まれたら、妻はオロオロ。

君が地震に遭えば、妻は停電の暗闇の中を自転車で藤沢まで捜索に行く。

君が無事に帰宅すれば、妻は安心。

君が眠れば、きっと妻も寝られるだろう。

 

君が怒れば、私は悲しい。

君が歌えば、私はほほえむ。

君が泣けば、私も泣こう。

君が笑えば、私も笑うだろう。

 

 

 

耕君がおだやかな一日を過ごしてくれるただそれだけが我が家の願い 蝶人