蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

あるアナウンサー

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「これでも詩かよ」第28番ある晴れた日に第159回

 

 

リタイアして終日家に居るようになってからは、毎日NHKのクラシック番組を聞いている。

 

「クラシックカフェ」という番組である。担当は、ちょっと野太い低音が魅力のアルトが唐澤美知子さん、同じアルトではあるけれど落ち付いた、けれどもどこか人世に疲れたくすんだ声でゆっくり語る高山久美子さん。

 

同じNHKのFMで、N響の生放送に登場する山田美也子という人の、男に媚びるような金属質のソプラノとは対照的に、深く心にしみる大人の声だ。

 

彼女たち、一体何歳だろう? 私はなんとなく「じゅん$ネネ」を思い出す。もしかすると二人とも凄い美人のような気もする。きっと結婚しているんだろうな。

 

もう一〇年以上も続いているであろう不動の日替わりコンビだが、今日は唐澤美知子さんの番だ。

 

この「クラシックカフェ」では、二人とも放送される曲や演奏団体の説明をするのだが、いつも気になることがある。

 

「演奏はベルリンフィルハーモニー管弦楽団」とひと息で読みあげるべきところを、二人とも「演奏はベルリン」「フィルハーモニー管弦楽団」のように、ベルリンとフィルハーミニーの間にわずかに間隔をあけるのである。

 

これが気になる。音楽用語を使えば、本当はスラーを掛けなければならないはずなのに。

 

もしもこのアナウンスを、ベルリンフィルフィルハーモニー管弦楽団の団員が聞いたら、「ヴィール シンド カイン ベルリン フィルフィルハーモニー! ニーム アイネン マーケル!」とかなんとか文句を言うのではあるまいか。

 

以前この件について、NHKのアナウンス室長宛に文句を言ったことがあるが、結局なしのつぶてだったな。

 

 かくしてベルリンとフィルハーモニーの懸隔は依然埋まらず、今日も唐澤美知子アナは、「指揮はサイモン・ラトル、演奏はベルリン フィルハーモニー管弦楽団です」

と、余裕綽々、自信満々の野太い声で喋ってる。

 

 

モーツァルトの迅さ身にしむ白露かな 蝶人