蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

風立ちぬ

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「これでも詩かよ」第34番ある晴れた日に第166回

 

 

 Le vent se lève, il faut tenter de vivre

風が吹いてきたね。さあ、もういっかい生き直そうじゃないの。

 

痩せたからだ、薄い骨に食い込むこの荷物は重いけれど、歯を食いしばって立ち上がり、目の前の地面に、新しい一歩を踏み下ろそうじゃないか。

 

この詩を書いた時、モンペリエの詩人ポールは、すでに五十一歳だった

 

詩人ならずとも若い時には、どこかから一陣の風が吹いてきたら、なにかいいことが待っているのではないかと本当に思えたが、

 

五〇の坂を転げ、六〇の谷に落ちこんだら最後、台風が何回やって来たって総身に感じる何かがあるわけもない。

 

それでも、それゆえに、

Le vent se lève, il faut tenter de vivre

風が吹いてきたね。さあ、もういっかい生き直そうじゃないの。

 

戦争をまぢかに控え、この腐った世界の未来になんの希望も見出せなくても、

それでもぼくらは、生きていかなければならないんだ。

 

痩せたからだ、薄い骨に食い込むこの荷物は重いけれど、歯を食いしばって立ち上がり、目の前の地面に、新しい一歩を踏み下ろそうじゃないか。

 

Le vent se lève, il faut tenter de vivre

風が吹いてきたね。さあ、もういっかい生き直そうじゃないの。

 

 

曼珠沙華世界一弱き国でよし