蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

空よ

f:id:kawaiimuku:20131009160211j:plain

 

 

 

「これでも詩かよ」第43番ある晴れた日に第176回

 

 

 

空よ、君は、いつも流れている。

君は、いつも黙っている。

 

おそらく君は、なにか考えているのだ。

考えながら、みずいろの夢を見ているのだ。

 

私は君がなにを考えているのか、知りたい。

君がなにを夢見ているのか、知りたい。

 

空よ、君は退屈すると小さな声で啄木の「雲は天才である」を朗読したり、

♪三千世界の烏を殺しお主と朝寝がしてみたい、とウナって赤面したりする。

 

たまには人間たちが蟻のように蠢く地球を見下ろして、

胸に手を当てて目を瞑ったり、微かなためいきをついたりする。

 

空よ、君は素晴らしく機嫌の良い日には、

太陽に向かって微笑んだり、「青い山脈」をバリトンの裏声で歌ったりもする。

 

けれども、君が怒ると恐ろしい。

風神や雷神なんかがとつぜん登場して、とんでもなく物凄いことになる。

 

空よ、君は、いつも流れている。

君は、いつも黙っている。

 

おそらく君は、なにか考えているのだ。

考えながら、みずいろの夢を見ているのだ。

 

 

世界中でいちばん売れた本はバイブルなんて知ってました? 蝶人