蝶人戯画録

毎日お届けする文芸、映画、エッセイ、詩歌の花束です。

マリオ・バルガス=リョサ著「アンデスのリトゥーマ」を読んで

kawaiimuku2013-01-18



照る日曇る日第561回

 人類は、共同体の維持・持続・発展のために生贄や人身御供を必要としてきたが、それはなぜだろうか。

おそらくは共同体の成員に対してあえて「平等な人為的脅威」を課すことによって、より共同体の精神的肉体的紐帯を緊密に強化しようとする政治的な深謀遠慮によるものだろう。

「平等な人為的脅威」を天慮に置き換えるために、古代ギリシアなどでは共同体の誰を生贄にするかについて神託が下されていたが、近現代では血統や異民族や身体上の差異などに起因する共同体内部での差別が重きをなしてくるようである。

しかし時の歩みと共に共同体がゲゼルシャフトに転化しようとも、生贄による共同体維持のシステムは不滅であり、たとえば最近では芸能界を駆逐された山本太郎氏や大阪の暴力教室の自殺者などがその好例であろう。


        新月や島の渚を照らしけり 蝶人