蝶人戯画録

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バート・ケネディ監督の「夕陽に立つ保安官」をみて

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bowyow cine-archives vol.664

 

原題は「保安官をみんなで助けよう」であり、内容もその通りの話なのに、なんでこんな奇妙な邦題になるんだろう。いっそ「夕陽が丘に立つ保安官」にしてもらいたい。

ちなみに私の郷里の夕陽が丘には、祖父の建てた巨大な十字架と、家族の墓が立っているんだ。

 

そんなことできっと詰まらない西部劇に違いないと思いつつみたのだが、得難い珍品であった。

 

豪州行きたさにアルバイトで保安官になったジェームズ・ガーナーが孤軍奮闘して乱れ切った町を平和にしてしまうという話なのだが、主人公も、その支援者たちも、恋人も、にっくき敵さえもどこか憎めないキャラクターばかりで、もちろん殺しや決闘も出てくるのだが、そこはかとないユーモアとペーソスが全篇に漂っている。

 

こんな奇妙な愉しさが味わえるウエスタンはおそらく唯一無二ではないだろうか。

 

 

なにゆえにウクライナで旅客機が撃ち落とされる誰一人喜ぶ者はいないのに 蝶人