蝶人戯画録

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ジャン=マルク・ヴァレ監督の「ヴィクトリア女王 世紀の愛」をみて

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bowyow cine-archives vol.665

 

 原題は「若きヴィクトリア」で、偉大な女王の少女時代、そして夫アルバート公との愛の思い出を描いている。

 

 これは2009年の英米共同製作の映画であるが、ウィキによれば発案者はアンドルー王子の元妻らしい。王室や女王の私生活や愛情を映画にして諸国の人々に公開しようとする根性は見上げたもので、わが皇室でも一部の女性週刊誌にまかせずにぜひ見習ってほしいものである。

 

 この国でもっとも正統的な歴史史観の持主である天皇と皇后、宮廷の前近代的な秩序に心身を損なった皇太子妃と彼女を懸命に支える皇太子、その2人の苦悩を生まれながらに背負っているようにみえるその娘、そして彼らをとりまく得体のしれない、つまり何を考えているのかてんでわからない皇族たち……。

 

 これだけでも英国のヴィクトリア朝をしのぐ壮大にして奇々怪々の物語の森、あるいは神話的暗がりが茫漠と広がっているではないか。いったいこの国の映像映関係者はなにをしているのだろう。

 

  なにゆえに突如早すぎた自己総括をする神戸の港から船出もせずに 蝶人